団地名:豊四季台
管理戸数:1,240戸
管理開始:昭和39年4月
所在地:千葉県柏市
団体名:四季の会
構成人数:21名(うち団地外3名)
活動年数:約10年
受賞履歴:2017年 優秀作品賞
2018年 優秀作品賞
2019年 殿堂入り
《夢のかよひ路、メモリアルデー》 13号棟前の日向の花壇、超高齢世話人トリオ(?)に若手のTさんが応援に入りました。今日は、天空のお花畑へと旅立った世話人の皆さんを追悼する、いわば召天記念日でもあります。原種系チューリップを愛したAさんには今年もショーウィナーをたっぷり、そして野の百合を愛したYさんには沖永良部産の琉球百合を8株も仕込みました。あの世とこの世をつなぐ夢のかよひ路、私たち四季の会はその『道標』なのかもしれません。
《書店前、カサブランカ通り開通式》 四季の会の宣伝活動の一環として、団地商店街にカサブランカの球根を贈るプロジェクト。3年目の今年はなんと合わせて23株。書店や理容美容室のある商店街東側にも進出しました。昨年11月下旬の仕込みから半年、再度の下草狩りを終えたばかりですが、最初に開花したピンク・カサブランカはH書店前、なかなかの迫力です。早朝までに姿を消した株を案じつつ、今日はお世話になっている店主の皆さんにもご出演いただいて、カサブランカ通り開通を祝っているところです。
《九十路の至福、石楠花賛歌》 石楠花が満開となった日陰の花壇、季節を問わず強いビル風に悩まされてきました。今日は10年の歳月を経て、これまで見たこともない華麗な花屏風が出現したところです。最高齢世話人Yさんの九十路を祝って、記念撮影を企画しました。昭和の戦争を生き延びた世代に共通する、忍耐力や勤勉さはもちろんですが、軽々と越境する知的好奇心に、その果敢な行動力に、心から畏敬の念を覚えます。まさに、人生百年の時代を指南する実践の人です。
《花屏風、もろ人来たりて》 今年は、これまで生育が遅れていた広場東側(テーブルベンチ側)の日陰の花壇でも充実した石楠花の開花が見られます。総延長8メートル超に及ぶ石楠花の屏風は、共同花壇誕生以来10年を経て、ようやく本来の花姿にたどり着いたと言えるのかもしれません。団地住民はもちろん、近隣の高齢者施設等から石楠花見物にわざわざ足を運ぶ方々との花談義。積み重ねてきた野良仕事、いや花手当てのご褒美なのに違いありません。
《花対話、妖精たちの街灯り》 花手当は厄介な下草刈り、苦労の後はとっておきの花対話です。早くも満開となった黄モッコウバラのアーチに見守られて、昨秋仕込んだ百合咲きチューリップ『パラード・レディー』が咲きそろいました。夕暮れ時、バラの枝葉越しに届くやわらかな陽光を受けて、花の妖精たちの街灯りが浮かび上がります。絹地のような薄く透き通った花弁には、光の道が生まれているのでしょうか。妖精たちの手にかかればたちまち魔法の街頭に変身です!
《あなたはまだ、そこにいるのかと》 秋の気配漂わせるけやき広場は、13号棟前の夜の共同花壇。9月7日、午後9時をまわる頃、暗闇の中で『月下美人』の開花が始まりました。今は介護施設で認知症を生きる世話人Hさんから託された、つかの間の幻影です。働き者の代名詞だったHさん、自分の身代わりをと用意してくれたに違いありません。開花後わずか数時間で姿を消す美の化身、あなたもセレンディピティの幸いは訪れたのでしょうか?
- 週に1回程度、花壇の管理をしている。
2014年4月より共同世話人の仕組みを導入、それぞれの自主性や時間管理を尊重した運営に移行しています。夏場の乾燥期に渇水の心配がありますが、この夏は異例の長雨も手伝って被害はありませんでした。なお、コロナ禍にあっては高齢化した世話人の健康管理は最重要、連絡便『ふくろう便』を活用して作業を呼びかけることが増えました。 - 植替えは年に2回、4・11月。秋の植替えをメモリアルデーとして、亡くなった世話人を追悼。春は植替えの球根のアマリリスやカラーなどに限定されるため、通常の花壇管理で対応しています。
- 花や苗の調達は、会員および支援者など住民からの現物を含む寄付が中心。幸い、URコミュニティからも副賞の形で支援を受けており、奈良や富山の農園から高額の品種を取り寄せることも可能になっています。また、商店街プロジェクトでは、カサブランカの返礼として福島川俣のざる菊を贈られ、寂しくなった秋の日向の花壇を飾っています。
- 団地建替に伴う『緑のワークショップ』を母体に、自治会役員と住民有志で『四季の会』を設立。当初は住民参加による失われたコミュニティの再構築を目指したものの、通常の運営では花壇管理の実務をこなしきれず、7年前の春に共同世話人の仕組みを導入、その後は全面的な寄付による運営に移行。『あなたを決してひとりにはさせない!花と緑と土と遊ぶ四季の会』と呼び掛けてきました。なお、発足以来のメンバーが次々と他界し、働き者の高齢世話人が要介護になると及んで、私たち四季の会の役割はあの世とこの世を繋ぐ『夢のかよひ路』でもあり、人の世の『道しるべ』でもあるのだと思えてなりません。
- 花壇のデザインは住民参加によるワークショップで議論され、基本的なコンセプトは現在も継承されています。花壇中央に低木を配置するとともに、合わせて4区画ある花壇(ラベンダーやヘメロカリス主体の日向の花壇、石楠花にクリスマスローズを配置した日陰の花壇)それぞれを代表する花を選んで季節感を演出していますが、季節を問わず吹き抜ける強いビル風との相性(?)も悩ましいところです。なお、商店街や熱心な支援者をはじめとする住民の皆さんから寄付を受けた花苗には、土壌や日当たりを考慮した上で特別にコーナーを設けて対応しています。
- 共同花壇のあるけやき広場には堆肥サイトが併設されていて、晩秋の落ち葉搔きが小さな世話人たちの楽しみにもなっています。福島第一原子力発電所の事故の際に柏市もホットスポットとなった影響で、実際の運用は7年前から始まりました。自家製の腐葉土として、またバーク堆肥や完熟牛糞と組み合わせて土壌改良に活用しています。コロナ禍で導入した『おうち花守り募集』では共同花壇で生まれた花苗を6号鉢等で貸し出し、花守り役をお願いしています。ご褒美は切り花やポプリというわけです。なお、ベランダ園芸の断捨離、鉢土の再生処理にも協力しています。
- 7年前の春、全面的な寄付に依存する運営に移行するにあたって、宣伝活動『花の精霊夏祭り』や、商店街での『カサブランカ通り』プロジェクトなどイベントを導入しました。また、コロナ禍での社会貢献として、今年2月には『おうち花守り』を募集。支援者の輪を広げる契機にもなりました。
- 7年前の春に共同世話人という仕組みを導入し、日常の管理を世話人ひとりひとりのライフスタイルに自由に任せることとしました。自治会の役員には通常の業務があり、配偶者の介護という難題を抱えているメンバーもいますので、定例会の開催はもちろん当番を決めての対応も壁に突き当たっていました。一方、定例会での飲食を伴う語り合いの楽しみは事実上なくなり、共同花壇のあるけやき広場での作業そのものが、世話人相互の井戸端会議としての役割を果たしています。世話人全員が揃うことはいくつかのイベントを除いてありませんので、世話人をつなぐ連絡便である『ふくろう便』を発行しています。最新号は62号、ここ何年かは毎年10通のペースで世話人の郵便ポストに投げ込まれるのですが、季節の花便りや会計報告に加えて、訃報や号外などの事件報道(?)も担当しています。また、自治会事務所の花梅を材料に梅仕事を呼びかけ、梅ジュースや梅ジャムを仕込むなど生活の知恵を交流する役割も担ってきました。幸い、共同花壇コンクール入賞の波及効果もあって、現在では小学生から現役大学生 そして昭和の戦争を生き延びた国民学校世代(最高齢は今年90歳に!)に至るまで、多世代13名の共同世話人で花壇の管理および周辺広場の見守りを続けることができています。家族の介護でイベントに顔を出すのが精一杯になっても、本人自身がデイサービスに通うなど要支援あるいは要介護の状態になったとしても、世話人としてかかわることができる、そうしたゆるやかな仕組みこそが私たちには欠かせないと考えています。
- 活動への影響
宣伝活動『花の精霊夏祭り』は寄付を募る場でもあります。頼りの団地ふるさと祭りが中止となり断念しました。 - 活動を維持・継続・再開するために実施した取り組み
今年2月、コロナ禍で自粛生活が続くなか、早春の芽吹きに心を動かされました。四季の会では住民の皆さんを気分転換させようと、『おうちデリカ』ならぬ『おうち花守り』のイベントを企画。共同花壇で生まれた花苗を鉢物にして、無料で貸し出すことにしたのです。会員および熱心な支援者の皆さんが、花守り募集のポスターを見て駆けつけてくれました。団地に入居したばかりの中国籍のご夫妻にも、原種系チューリップの花守りを引き受けていただけるなど、予想外の反響を呼んだところです。 - 現在の状況と今後の活動見通しについて
柏市内では毎日100人規模の新規感染者の報告があり、ここ豊四季台団地でも、来年初めも含めてほぼすべてのイベントが中止に追い込まれています。高齢世話人の皆さんはワクチン接種済み、感染対策も十分ですので、日常の花壇管理には問題がありません。社会貢献としても位置付けている、商店街での『カサブランカ通りプロジェクト』については、早くも4年目に突入。秋咲きに調整した12株が生育途中です。恒例の『メモリアルデー』はもちろん、反響を呼んだ『おうち花守り募集』もコロナ禍を生きる私たちの必需品になりそうです。
共同世話人体制に移行することで、ボランティア組織『四季の会』構成メンバーは、共同花壇管理の第一線を退いた自治会役員8名が、名誉会員として対外的な窓口になる一方、花壇管理の実務を共同世話人(現在13名)が責任をもって担うかたちになりました。世話人ひとりひとりにとっては、自らのライフスタイルを基本に時間管理や体調管理をすることで、ボランティアとしての自発性を確保できます。いわば、晴耕雨読の自由自在さが魅力です。どこかの公的機関の下請けでもなく、ボランティアがボランティアを使うなどという矛盾もありません。また、幼稚園児や小学生など、好奇心旺盛な子供たちが楽しみながらボランティアにかかわるには、ひとりひとりが主体となる共同世話人という仕組みが、魅力的に映るはずです。世話人であることを証明するグッズ(名刺代わりの認定書とストラップ)も用意して、けやき広場の景観保全に一役買ってもらっています。とりわけ、けやき広場を遊び場とする小さな世話人のネットワークが、建替後のコミュニティ再生にどんな効果をもたらすか、期待を持って見守っているところです。
2021年度共同花壇コンクール<審査結果>
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